2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

私の部屋

しばらくぶりに育った街に帰ると、見慣れた風景と空気があった。街のあちらこちらが変わっていないか車の窓から覗き込む。街も家も人も、皆一様に少しずつ歳を重ねているが、まだまだ現役みたいだ。 自分の部屋に入ると、頭のてっぺんから足のつま先まで、す…

さらさら

空港に向かうバスは高速道路を一定速度で前へ前へと進む。窓から見える景色は、かつて何度も乗ったバスからの景色と変わらなく見えた。時折見える北海道の地名を記した看板を除けば、このままあの場所まで行けそうな気配すらある。 ここに来て買った冬の靴は…

初雪が降って

街が真っ白にそまる頃、思い出すのは高校時代。高校の担任の先生がクラスのみんなにChristmas songのいっぱい詰まったMDをプレゼントしてくれたんだ。今でも大切な大切な宝物。 中でも、KENNY G の「AWAY IN A MANGER」は、初めて聴いたときあまりのサックス…

赤いマフラー

降るよ降るよと言われてた雪はとうとう降らないまま朝になって、その代り、凍てつくような空気がまとわりついてきた。手袋の中まで入りこんできた空気を捕まえると、これからやってくる冬の厳しさを少しだけ教えてくれた。 カフェからみる人波も疎らで俯きが…

ひだまり

北海道の秋は、冬みたいな日と、雲一つない青空の日があるようだ。休日の道は渋滞ばかりで時計を見るといつもより秒針が早く動いてる気がした。子どもの頃は大人になっても、ずーっと関東のどこかに住むものだと思ってた。自分の育ったところから引っ越すこ…

引き出し

立冬を終えた空気は、それまでのとは違うみたいにピンと張りつめていて、真っ白な息がマフラーのかすかな隙間からこぼれた。 何やってるんだろう。思っても仕方のない人のことを思い、思っても変わることのない過去を見つめてる。 あの日、確かに感じた瞳の…

ちぐはぐ

慌てて準備をして家を出ると、コートとスカートがまるで喧嘩してるようにちぐはぐで、戻ろうかと思ったけど、そのまま歩き出した。 平日の出勤を終えた時間の電車はそれほど人はいなくて。余計に自分の格好が浮いて見えた。おなじことを考えてはダメだよと言…

雨の日

こんな寒々とした秋雨の日には、ショパンが弾きたくなる。今日はバラード4番を弾きたい気分で雨音を聴きながら弾いていたら、急に切なくなってエチュードに切り替えたけど、どんなに軽快なキラキラしたアルペジオを弾いても、mollの曲にしか聴こえなかった…

秋の終わり

季節が巡るのは意外に早いもので、北海道の秋は終盤。 木の葉が風に身を委ねるように、くもりの空は晴れにはならないけれど、決して気持ちに連動してるわけじゃないよって、そんなこと分かっている。 あのまま引っ越さずにいても、すべてが良かったわけじゃ…